◆アルコール依存症とは◆
アルコールってどんな物?
アルコールは嗜好品として多くの人に飲まれています。日本酒、ビール、焼酎、ウイスキー、ワインなど、そのほかにもいろいろなお酒があり世界中で飲まれています。文化としてのお酒はそれなりに価値のある物ですが、それと同時に、アルコール飲料に含まれる“エチルアルコール”は、『依存性の薬物』でもあります。
コンパで雰囲気を盛り上げるために飲むとか、上司に理不尽なことを言われてやけ酒をするとか、寝付きが悪いから飲む(薬は使いたくないから)と言うように無意識のうちにアルコールの薬物としての作用を利用しています。
アルコールの働きというのは、中枢神経の抑制作用があります。先ず、ほろ酔い状態では大脳皮質という理性をつかさどる部分が抑えられ、感情や本能が解き放たれてリラックスします。酔うと、悩みやいやな気分を忘れて、気が大きくなるのはそのためです。さらに酔いが進むと、大脳辺縁系、小脳、脳幹と言った部分が抑えられ、ろれつが回らない、千鳥足になる、泥酔する、昏睡と進み、ついには死に至る事もあります。
こうしてたびたび飲んでいると、脳がアルコールに慣れてきて強くなります。少しの量ではものたりなくなり、いつのまにか“酒飲み”ができあがります。
アディクションって何?
日本語では嗜癖といいます、都合が悪くなっても止められない習慣のことです。次にあげる三つの特徴があります。
1.強迫-どうしてもその行為を行わずにいられないほど、強い衝動が起こり、考えないようにしようとすればするほど頭に浮かんできてしまいます。
2.コントロール喪失-いったんその行為を始めると、あるところに行き着くまでやめられなくなることです。
3.負の強化への抵抗-その行為を行うとその結果がよくないことがやる前からわかっていても、その行為を行ってしまうことです。
アルコール依存症の特徴は?
1.慢性-一時的な物ではなく、高血圧や糖尿病のように長くかかる病気です。
2.進行性-ゆっくりと進行して、ほとんどの人はかなり悪くならないと気がつきません。
3.永久的-この病気の本当の回復は、一滴の酒も口にしてはならないということです。完全に治る(コントロールを取り戻す)ことはありません。
4.一次性-ほとんどの場合なにかほかの理由があってこの病気が起こるのではありません。
5.先が予見できる-この病気は放っておくと悪化していく一方です。ただし支え手がいると悪いながらもバランスを保ち破綻を来さないこともあります。アルコール依存症者の回りにいる人たちは大変ですが、先を見通すことによってストレスがいくらかでも減ると思います。
アルコール依存症の診断は?
1.精神依存-“飲みたい”、“飲みたい”と、心がアルコールにつかまった状態です。薬物(アルコール)探索行動がみられます。
2.身体依存-体がアルコールから離れられなくなった状態です。離脱(禁断)症状がみられます。この状態になるとアルコールの量を減らしたり止めたりすると不快な症状(発汗、不眠、イライラ、振戦、けいれん発作、意識障害など)がでてくるのです。そのためによけいアルコールが止めにくくなります。
3.アルコール関連障害
A.身体的問題-肝臓障害、高血圧、糖尿病などの合併症を持っている場合
B.家庭的問題-いつも酔っていて大切なことが相談できない、ア症者本人がいるだけで食卓が緊張する(酔うと怒りっぽくなる)、飲みすぎを注意してしょっちゅう喧嘩になるなどの問題がある場合。
C.社会的問題-勤務中に酒のにおいがする。遅刻、早退、休日の翌日に計画的でない休暇を取る。タクシーに乗ったのに酔いつぶれて交番に突き出されたことがある。酔って喧嘩をして警察のお世話になったことがあるなどの場合。
アルコール依存症はほっておくと進行します。進行の経過を大まかに見ていきましょう。
<アルコール依存症の進行過程>
A.飲みはじめの時期
1.飲みはじめ-高校を卒業した頃から堂々と飲む場合が多いようです。はじめから強い人もいれば少しで真っ赤になる人もいます。
2.多幸感の経験-気持ちが良くなり、気分が高揚したり、飲んでいる場での一体感を感じたりします。職場の仲間と上司の悪口を言って盛り上がったり、サークルの仲間で喜びや、悔しさを共有したりする事でアルコールがよい物だという実感を持ちます。
3.軽い二日酔い-飲みはじめの頃でも飲み過ぎて苦しんだり、二日酔いで苦しんだことがあるはずですが、なぜか酔ってよい気持ちになったことしか思い出せません。
B.依存症初期
1.常習飲酒-アルコールを毎日のように飲むようになります。たとえば、仕事が終わるとみんなで飲む習慣ができたり、食事の時にいつも晩酌をするようになったりします。
2.耐性の上昇-毎日飲むようになると前と同じくらい良い気分になるためには以前よりたくさんのアルコールを飲む必要が出てきます。これを耐性の上昇といいます。
3.精神依存-家に帰ってきてあるはずのアルコールが無かったとするとあなたはあきらめますか?台所の料理用の酒を探したり、はたまた大雨の中1キロ以上先の酒屋さんまで買いに行きますか?(これを薬物探索行動といいます)
4.データの異常-人によっては、職場や、保健所の健康診断でγ-GTPの高値、高血圧、糖尿病などを指摘されます。これらの病気はアルコール多飲により悪化していることが考えられます。このとき注意されてもあまり真剣に考えません。
C.依存症中期
1.飲酒についてのうそ-酒を飲んで帰宅しても飲んでいないと言います。家人に 酒臭いと言われると、飲んだことは認めても二杯しか飲まなかったとうそをつきます。
2.コントロールの喪失-朝仕事にいくときは、今日は飲まないと本気で誓うのに家についたときには、酔っぱらっています。一杯と決めて飲んだつもりでもいざ飲みはじめると泥酔するまで飲んでしまいます。
3.罪悪感と後悔-朝目が覚めたときに妻から昨日は大変だったわよと言われて、そのときは申し訳ないと思い後悔します。後ろめたい気持ちがでてきます。
4.隠れ飲み-後ろめたい気持ちがあると人前では飲まずに隠れて一人で飲むようになります。犬の散歩に朝早く出かけて、コンビニの前で回りをキョロキョロ見ながら先ず一杯、そして・・・。
5.価値観の逆転-気がつかないうちに、家族、友人、仕事、自分の人生設計など、生活のすべてに優先してアルコールを飲むことを考えるようになります。
D.依存症後期
1.普通の気分を保つために飲む-この段階では、体内にアルコールが入っていないと普通の生活ができない状態になります。それは身体依存の状態にあるからです。酒が切れるとイライラして、ちょっとしたことで怒りだし、頭にきては飲みたくなるし、字を書こうとすると手がふるえてうまく書けません。
2.身体症状の悪化-肝硬変、食道静脈瘤、転倒による怪我など、繰り返し同じ病気で入院治療を受けるようになります。
3.意志の力が失われる-飲まないでいようといくら自分に固く誓っても無駄です。それでも自分では、意志の力でやめられると思っています。
4.ブラックアウト-飲酒が原因で飲んでいる間の記憶を失うことです。病気が進むと少ない量の酒でブラックアウトが起きます。
5.耐性の消失-後期になると耐性は低下して以前ほど飲めなくなります。本人はまだ足りないと飲んでいるうちにつぶれてしまいます。
<援助者にとって大切なこと>
援助をする人、家族など周囲にいる人にとって大切なことは、アルコール依存症者本人がどの段階にいて、これからどうなっていくかを見極めることです。
その際に気をつけることはアルコール依存症者には否認という嘘がつきものだということです。
次に、本人がアルコール依存症を続けていられるためには、どこかにそれを支えている人や状況が必ずあります。その支え手を見つけることが大切です。支え手はたいていは善意や親切、優しさという衣を着ているので慣れないと探すのが大変です。支え手が見つかればその支え手にアプローチしていく必要があります。本人を援助の対象にできなくてもその家族などの支えてを援助の対象にしていくことができます。
最後に一番大切なことは、アルコール依存症は、回復可能な病気だということです。つまり本人がなろうと思ってなったのではないし、治療をする事によって回復することを信じられるということです。